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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

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2021年11月21日(日)に第574回月例会(高岡郡日高村鴨地~小浜)が14名の参加で行われました。

 9時30分いの町柳瀬本村「水辺の駅あいの里仁淀川」に14名が集合した。久しぶりに長野県から藤田さんも参加されている。本日の行程の説明のあと車で国道194号線を400mほど北上,佐川町方面に至る柳瀬橋を渡って右折。仁淀川右岸側の県道柳瀬越知線を遡り,長畑,小浜の集落を経て鴨地集落手前の広場に駐車し9時50分頃から観察を始めた。
 道路のり面は草刈りされ見るべき花は少ない。フユイチゴに実がつき,ヨシノアザミやシロヨメナにはまだ花が咲いており,ハナミョウガの実やツルコウジ,オオバヌスビトハギに実がついている。ノシランのまだ色づかない実が垂れ下がり,スダレギボウシが点在する。マンネングサの仲間はコモチマンネングサとタカネマンネングサが壁面に張り付いている。アオイスミレやナガバノタチツボスミレの葉も見られる。コウヤボウキの花やヤブミョウガには実がついている。次々とシマカンギクの花に出会い,そのたびにカメラを向ける。のり面の上部にビワが生え,クスドイゲのとげとげの枝を見上げる。
 畑に出るとウシハコベやカナムグラ,ヤクシソウ,ノコンギク,サギゴケ,ホトケノザなどに花が咲き,鴨地集落近くの斜面や草地にはヒメツルソバ,ホシアサガオ,アカバナ,イヌタデなどの花にサネカズラやカラスウリの実が目立つ。川沿いの樹林にイチイガシが1本,県内では社寺林以外では意外と少ない。葉のつき方と枝ぶりが平坦で,独特の雰囲気をもっていることを藤田氏が解説。そう思って見ていなかったので,改めて他のカシ類とは一線を画することを再確認。
 11時頃に鴨地の集落に到着し,住宅の間を通って林道を上がる。林道からは仁淀川の上流方面がよく見える。途中背の高い石灯篭を過ぎ,集落を抜けたところに古美谷神社の急な石段があり,そこを登る。石段沿いにカンザブロウノキ,ヤマビワ,ルリミノキ,ミミズバイ,タイミンタチバナ,シリブカガシ,クロバイ,ミサオノキなど生え,石段ぞいにはセンボンヤリの閉鎖花やキッコウハグマの花,エダウチホングウシダやオオカグマなどが見られた。急な石段と,急な車道を登りきると社殿があり,ヒノキの大木かと思っていたところ,藤田氏がこれはサワラだと教えてくれた。なるほどヒノキとは樹皮が異なり,白っぽくたたくと柔らかいというかぼくぼくしている。アスナロやコウヤマキも植えられており,何か訳がありそうだ。近くでほんのりとカツラの落葉が香っている。
 神社を後にして林道に出ると,水源の谷にオオバノアマクサシダが生えている。宇賀氏が林道谷側のガードレール沿いにヒノキシダが群生していたものが何者かにことごとくそげ落とされているのを見て残念がっていた。一体誰の仕業なのか,道路下を見ると確かにヒノキシダがたくさん落ちている。
 林道をさらに上がっていく。テイカカズラに見慣れない虫こぶがあり,赤く熟した実と未熟な緑色の実が両方見られるヤマホロシにカメラを向ける。穂の出たオオハナワラビや羽毛状の実が着いたボタンヅル,赤い実のついたコバノガマズミ,翼果が飛び始めたテイカカズラなどを見ながら進むと大堂という集落に着く。この辺りで有線から昼を知らせる音楽が流れてきた。人家近くの石垣にウスベニニガナの花がシマカンギクと共にたくさん咲いている。ウスベニニガナは海岸近くに多く見られる植物だが,意外と内陸地にも見られることがあるようだ。集落内のイチョウが見事に黄葉し,木々の隙間から仁淀川が見える。集落上部にヤダケの群落があり,肩毛のあるメンヤダケも混ざっている。大堂の集落を12時30分頃に通過し,佐川町四ツ白方面との分かれで昼食。寒いのでめいめい日向を探してお弁当を開く。
 13時10分頃に分かれを出発。のり面に小さなギボウシがたくさん着生し,オオミヤマウズラなども見られた。峠から林道小浜線を下る。黄葉した葉を落とさず着けているヤマコウバシ,ミソナオシに大量の実がついている。ノイバラやフユイチゴの赤い実,ヤブムラサキの紫色の実,ノササゲの美しい薄紫色の豆,マツカゼソウやジンジソウの花などを見ながら下る。途中見上げると見慣れない葉があり,イソノキであった。県内では中部から西部にかけて点在するも,それほど普通なものではない。道から手の届くところにムクノキの実がなっており,少し時期は遅かったがまだ十分に食べられる。手を伸ばして口に含むと,まるで干しブドウの味で美味。藤田氏,初めて食べたと大感激。なかなか手の届くところには無いので貴重な場所である。シロヨメナやアキノキリンソウの花,サンカクヅルの紅葉や,滅多に見られない?艶々で青紫色のヤブニッケイの実,イズハハコのロゼットなどを見ながら下ると,藤田氏が「あった!」とつぶやいた。
 実は今日の観察場所は,植物誌調査の際に鴨地でトキリマメ採集の記録があり,目的の一つであった。鴨地では確認できなかったが,小浜林道でやっとトキリマメを見つけることができた。何の変哲もないツルで,実があれば私でも見つけられたかもしれないが,実のない状態でしかも黄色くなりかかった三出葉だけでは,とてもそれとはわからない。さすがに実物を見ている人にはかなわないと脱帽。改めて藤田氏に感謝である。トキリマメは関東地方などでは普通だが,県内では非常にまれで,数ヶ所でしか採集されていない。私は一昨年にやっと物部村で実が着いたものを見たのみである。ただ,今回発見された場所は,植林地の林縁で細々と生きているようで,今後の行く末が少々心配な状態であった。さらにその下部でももう一株確認されたが,結局この3株のみであった。
 15時20分頃に小浜林道の入り口に到着。車を駐車場所から順次運び,現地で解散した。
〔鴻上泰〕
キッコウハグマ
キッコウハグマ
シマカンギク
シマカンギク
ジンジソウ
ジンジソウ
トキリマメの葉
トキリマメの葉