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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2019年6月1日(土)~2日(日)に第29回四国植物研究会香川大会(会場:香川県観音寺市かんぽの宿観音寺,観察会:香川県観音寺市有明町有明浜・香川県三豊市豊中町不動の滝)が行われました。

6月1日(土)
 12時にかんぽの宿観音寺の1階ロビーで受付が開始された。受付では香川県内各地の自然観察のパンフレットと会員手作りのティッシュケースをいただいた。開始にはまだ時間があったので,前庭などを散策していると,参加者が次第に集まってきた。
 13時30分に予定通りに大会が開始された。総会では各県の活動状況の報告があった。ほぼ各県昨年通りの活動状況だが,愛媛県からは会誌の印刷費をネット印刷で大幅に削減し,会費を半額の2000円に下げたこと,および来年は愛媛県の大三島を予定している旨の報告があった。
 研究発表では最初に高知県の田邊由紀さんが「高知県外来植物調査の結果について」発表した。この調査では727種の外来植物が確認され,うち101種が新たな記録であった。新しく記録されたものとしてシロガラシ,ハイクサネムなどが紹介され,いままでイモネホシアサガオとしていたものの扱いの問題や特定外来種の状況,みんなで調べる外来植物の調査結果,特定外来種の除去活動などが紹介された。
 続いて愛媛県の福岡 豪氏から「愛媛県の市町村史に記載された水草の種類」についての報告がなされた。市町村史に掲載された上位のものはセリ,ウキクサ,コナギ,ヒルムシロ,ヒシなどであり,特筆すべき記載としてはスブタ,ミズオバコ,サジオモダカ,ゴマシオホシクサ,サギソウ,オオアブノメ,マルバオモダカなどの記載があった旨が報告された。
 同じく愛媛県から兵頭正治氏により,トピックスとしてオオカメノキの帯化,ワチガイソウの匍匐型,ヒロハノコギリシダ,シコクトリアシショウマ,オオユリワサビとユリワサビの鱗茎柄の違いなどが報告された。
 徳島県の木下覺氏からは,「黒沢湿原の植物」として,これまで未記録であったミヤコイバラ,オオイヌノハナヒゲ,トガリバメシダ,サツマシケシダなどが紹介され,ごく最近の新たな発見としてトウゴクミツバツツジ,クロゾウコウガイゼキショウ(仮称),ほか代表的な希少種としてシロテンマ,ミズトンボ,サギソウ,ケミヤマナミキ等々が紹介された。  
 香川県からは高家和彦氏が「香川県新産のシチトウハナワラビ」について報告があり,久米修氏から「最近香川県で見つかった植物」としてアカヒゲガヤ,緑色の花のタチツボスミレ,ヒメフタバラン,レッドドラゴン,センニチモドキ類,キクバアリタソウ,バルカンノウルシなどが紹介された。明日の観察会の注意事項が告げられて17時ほぼ予定通りに終了し,18時からは大広間で懇親会が行われた。

6月2日(日)
 予定より少し早めの8時20分に宿舎前で記念撮影後,車に分乗して観察地の有明浜に向けて出発した。8時50分に銭形展望台に到着し,9時10分頃に琴弾公園の駐車場から観察が始まった。天候は曇りで,浜を観察するには暑くなくて最適である。香川植物の会では月例会も兼ねており,当日参加者も集まっていた。  素晴らしく立派な松林で中々な名木ぞろい。早速下草を見るとシロバナマンテマの花が咲いており,さらにカワラサイコがたくさん咲いているのには驚いた。高知ではほとんど見られなくなっている植物である。銭形の近くではハタザオの花やアツバスミレ,ハマボウフウの花,ハマボッスの花,ツルナの花,ハマアオスゲなどとともにウンランの葉もちらほらと見られた。かつては浜が黄色くなるほどウンランが群生していたらしいが,今は囲って保護している。カワラヨモギも多く,寄生するハマウツボの枯れた姿も観察できた。一角には帰化のブタナやヒメヒオウギ(アノマティカラクサ)も花が咲いており,ハマゴウにはアメリカネナシカズラもかぶさっていた。砂浜にはハマニガナの花,コウボウムギ,コウボウシバ,それに高知では見られないスナビキソウの花がたくさん見られたのには感激した。アサギマダラが訪花するらしく,「アサギマダラ飛来中!」ののぼりが立っていた。そういえば大分の姫島などスナビキソウが咲くころにアサギマダラが群舞する様子がインスタなどに投稿されていた。愛媛のグループではスナビキソウの個体数をカウンントしていたが,途中であきらめたようである。昼までゆっくりと観察して,午前中で一応研究会は終了。
 午後からはオプションで,香川の月例会に同行して三豊市豊中の不動の滝に向かった。我々は途中のコンビニで軽く昼食を済ませ,12時20分に不動の滝カントリーパークの駐車場に到着。上へ向かって遊歩道があり,先着の高家さんと兵頭さんの声のする方向へ上がっていった。さぬき安山岩の岩石地で,アキニレが多くクヌギにカゴノキ,カクレミノ,ダンコウバイ,トベラ,ナナミノキなどが混生し,ヤマブキの花が咲き,イワガサやフユザンショウ,ヒトツバハギなどが生えている。植生は高知県の石灰岩地と似たような印象を受けた。岩場にはイワヒバが多く,カワラマツバ,ヒカゲスゲほかヒメウラジロやエビガラシダ,ビロードシダをはじめジュウニヒトエやキビノヒトリシズカも見られ,なかなか魅力的な場所であった。ゆっくり上がってきた香川のグループとすれ違い,午後2時過ぎに駐車場へ降り,帰路についた。〔文:鴻上 泰〕
スナビキソウ
スナビキソウ
ウンラン
ウンラン
不動の滝
不動の滝
ナナミノキ
ナナミノキ
エビガラシダ
エビガラシダ
ジュウニヒトエ
ジュウニヒトエ