menu

The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2018年8月12日(日)に第535回月例会(梼原町四万川地芳峠・姫鶴平・越知面~四万川線)が行われました。

 家を出るころは土砂降りで、先行き天候が懸念されたが、7時に巨峰園でバスに乗車するころには小降りとなった。巨峰園で2名,高知大学医学部付属病院外来駐車場で4名乗車し、いの町波川の仁淀川河川敷駐車場で9名,合計15名で8時に河川敷を出発した。土佐ICから高速経由,須崎中央ICから国道197号線を梼原へ向かった。9時に道の駅布施ヶ坂で休憩後9時30分に梼原の道の駅で宇賀氏と合流し、440号線を北上、永野の地芳トンネル手前から旧道へ入った。梼原へ入る頃には薄日が差すくらいの天候であったが、峠方面は雲に覆われていた。10時10分頃に地芳峠下ほぼ海抜1000m付近でバスを降りて観察を始めた。この付近はかつて採草地が広がっていたものと思われ,放置されてクマノミズキやアカシデ,クマシデなどのシデ類が多く,ヤマグワ,ケヤキ,サワグルミ,ミズナラ,ケヤマハンノキ,ウリハダカエデなどを混生する二次的な落葉広葉樹林に遷移途中といった感じの林である。車道沿いにはベニドウダンが多く実がたくさん着いている。林内にはツリバナ,マユミ,ノリウツギ,コバノガマズミ,ガマズミ,ウスゲクロモジ,アオハダ,タンナサワフタギ,コバンノキ,コアカソなどの低木がまばらに生え,クサアジサイやオトギリソウ,クルマバナ,ホタルブクロ,ヒメヤブラン,ダイコンソウなどの花やつぼみのオオバショウマ,オミナエシのほか,すでに果実のクモキリソウ,ウバユリ,ホウチャクソウなどが点在する。石灰岩の岩にはクモノスシダが生え,岩の下のオオバノヤエムグラは半分実になっていた。ヘアピンカーブを2回通過するとシデ類をまじえたアカマツ林で,斜面にはゲンノショウコの紅花,コウゾリナ,ホタルブクロの白い花,カワラナデシコの淡紅紫色の花,ナガサキオトギリの黄花などが見られ,さらに上部の斜面には実になったウメガサソウの群生があり,ホソバノヤマハハコのつぼみなどが見られた。ハギの花が咲きはじめており,ヤマハギが多いがツクシハギも見られる。峠近くの谷ぞいにはシシウドの花が目立ち,メヤブマオ,オタカラコウ,ハンカイソウ,キバナアキギリ,キクムグラなどが見られ林床をテンニンソウが群落をなし,オノエヤナギも1株生えていた。佐々木さんが花茎をあげているモウセンゴケを見つけ,付近を捜してもう1株確認。道下にすごい勢いで実をつけているウリハダカエデがあり,枝の一部が枯れかけていたので,危ないのかもしれない。峠直下の木陰に特徴的な蕾をつけたハバヤマボクチが1株みられ,かつての採草地の名残りであろう。上部の林の中にクモキリソウの大株が何株もあり,ハガクレツリフネに花が咲いていた。
マネキグサ
マネキグサ
 地芳峠に到着した時には12時を過ぎていたので,バスに乗車してトイレ休憩と昼食場所として姫鶴荘へ向かう。姫鶴荘周辺はガスで何も見えない状態であったが,お盆で里帰りした人の避暑であろうか,人と車が溢れていたのには驚いた。時おり雨も降るというより,風で吹き上げられてくるので屋根のある休憩所の椅子もテーブルも濡れていた。
 13時10分に姫鶴荘南側斜面の石灰岩地へ向かう頃には雨が降り出し,レインウェアでの観察となり,しかもブユも多かったのでゆっくり観察はできなかったが,シデ類主体の自然林にはシロダモ,ミツバウツギやハマクサギ,タムシバ,メギ,オトコヨウゾメなどが生え,林床にはフタバアオイ,ヤマトグサ,コフウロ,サワルリソウ,キツリフネなどが見られるなかなか良い林であった。
 当初の予定では地芳峠から源氏ヶ駄場まで歩く予定であったが,県境の歩道は繁って通れず,自動車道を歩かなければならないのと,歩くのには時間的にも無理なので断念した。直接バスで源氏ヶ駄場へ向かおうとも思ったが,とにかく車がひっきりなしに通るのでバスとの行き違いにも困難と判断し,13時40分に峠から引き返すことにした。
モウセンゴケ
モウセンゴケ
 14時10分に越知面後別当から四万川上成への車道へ入り,14時30分に峠手前で降りて歩いて観察をした。オオキツネノカミソリの花は終わりかけながら花があり,トチバニンジンには実がついていた。小さなシコクエビラフジがちょうど花時で,よく見ると車道ぶちの林縁に群生していた。ほとんど植林地だが,林の中にはウリノキが多く,シラキ,コゴメウツギ,サンカクヅル,ミヤマコナスビも目立った。
 30分位の観察の後,再びバスに乗り,峠を越えて蛇紋岩が出だすあたりでバスを降りて観察した。アオダモ,クマシデ,ハネミイヌエンジュやダンコウバイの実のほかムカゴイラクサの花が咲いていた。
 15時30分ころに上成を経由して16時に梼原の道の駅でトイレ休憩後,高速を通り17時20分に仁淀川河川敷に到着して解散した。〔文:鴻上泰〕
地芳峠付近
地芳峠付近
ウメガサソウ
ウメガサソウ
オオキツネノカミソり
オオキツネノカミソり
キツリフネ
キツリフネ
クルマバナ
クルマバナ
シコクエビラフジ
シコクエビラフジ
ハガクレツリフネ
ハガクレツリフネ
ハバヤマボクチ
ハバヤマボクチ