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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

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2018年6月10日(日)第533回月例会(須崎市上分横川)が行われました。

 今回の月例会は本来なら須崎市神島に行くことになっていたが、あいにく南海上に台風5号があり、雨も激しく降るという天気予報であったため、万一の安全を考え、予約してあった渡船もキャンセルし、急遽、行き先を変更しての観察会となった。神島にいくことを楽しみにしていた会員の方にとっては残念な変更になってしまったが、機会があれば番外編を設け再度計画したいと思ったことであった。そして変更先に選んだのは、最近新たにハナガガシの自生が確認された須崎市上分横川地域であった。
 天候も思わしくなく、急遽の変更もあったせいか、集合地の道の駅「かわうその里」に集まったのは、総勢7人という少人数であったが、幸い、雨も心配されたほどではなく、9時前には3台の車で出発した。新荘川に沿って197号線を夫領というところまで進み、そこから新荘川にかかる橋を渡って、横川の部落に向かった。そして部落の最奥付近から山上に作られている「よこがわ公園」へと続く勾配のきつい道路に入って行った。道はよく整備されていた。道路に入って少し進んだところに車を止め、そこから道路沿いの植物を観察しながら、よこがわ公園を目指して歩いた。道沿いでは思いのほか多くの植物が観察できた。なかでもシラヤマギクの若い株や蕾をつけたノギランなどが非常に多くて目を惹かされた。フジツツジやズイナなども多かった。マタタビの花や、若い果実をつけたイイギリなどもあった。
 そして、歩き始めて1時間半ほどたった付近で、待望のハナガガシに出会った。まるで杉のようにスラッと伸びた真っ直ぐな幹とやや白っぽい木肌が印象的であった。そして縦にブツブツと続く皮目は、タマミズキの木肌を思わせるようであった。葉の細長い印象は、牧野植物園内のハナガガシの葉に比べるとやや物足りない気がしたが、それでもアラカシなどに比べると随分細長いものであった。ハナガガシはかなり広い範囲に点々と散在していた。幼木もあった。それにしてもこんな稀少な樹木がこの山の道路沿いにこんなにも多くしかも結構な大木で点々と自生していたのに今まで気づかれなかったことが不思議な気がした。そして高知県の自然の豊かさを改めて感じるとともに、今まで調査したことのない地域に今まで以上にでかけることの重要さを感じた。
 少々足もくたびれてきたころ、蕾のひらきかけた小さなイソノキが一本見つかった。そこからよこがわ公園はもう近かった。12時頃にやっと公園に到着。この公園は地元の方々の長期にわたる労力により平成13年に完成したそうで、手作り感のある温かい雰囲気の公園であった。広い公園には主にツツジ類などが植栽されていた。そして何よりもここからの眺望がすばらしいようだが、残念ながら、この日は天候が悪く全く何も見えなかった。是非もう一度来て、標高500mの公園からの景色を楽しみたいものだと思った。公園の一角に小さな小屋がつくられていて、丁度小雨も降っていたが、全員その中に入りゆっくりと食事をすることができた。食事後はすぐに下山を始め、車まで歩き流れ解散とした。今回の観察会は島には行けず残念であったが、観察した場所が、月例会としては初めての場所であって、とても有意義な観察ができ、思い出に残る一日となった。〔文:宇田英一〕
イチヤクソウ
イチヤクソウ
ハナガガシ
ハナガガシ
ハナガガシ
ハナガガシ
イソノキ
イソノキ