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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

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2017年12月2日(土)~3日(日)に第527回月例会(室戸市元金剛頂寺・室戸岬町最御﨑寺~室戸岬,東洋町野根・甲浦・白浜,海陽町奥浦)が行われました。

2017年12月2日(土)
 7時30分に南国市の巨峰園に12人が集合し,7時45分頃に野市で松本氏と合流,さらに8時10分安芸市球場前で鴻上と合流したが,鴻上は都合により自家用車で並走し,9時20分に室戸市吉良川のキラメッセでバスに乗車。最初の訪問地である室戸市元の金剛頂寺に9時40分に到着し,奥の信徒会館から山に入る。境内はスダジイ主体の巨木林で,毎年ヤッコソウが咲くことで知られており,ヤッコソウ自生地として高知県の天然記念物に指定されている。林床のやや乾燥気味の場所にオリヅルシダが見られ,相変わらずハヤマシダも1株健在だ。谷筋にはシロヤマシダ類などの群落が見られ,道端にエダウチチジミザサが開花中。弁財天堂の池を過ぎ,北向地蔵堂の裏手の林内に入る。林内にはスダジイの下に低木状のヒロハノミミズバイが群生しているのだが,やや陽が当たる場所のみやっと花がしょぼしょぼと咲いている程度で写真にならない。上層を覆うシイが枯れてギャップが出来た時に一斉に開花するのだろうか。この暗い林内でどのような暮らしをしているのか不思議である。他の自生地の陽当たりの良いところに生えている個体には花が良く咲くので,余計にそう思う。暗い林内にはトサノアオイやナギランの果実を着けた個体も確認できた。霊宝殿から本堂裏手のシイの根元には数ヶ所ヤッコソウの花が見られ,さらにいつも多くの花が咲く智光上人御廟付近のシイには,かなり多くのヤッコソウの花が見られた。すでに雌しべの先が黒くなった個体もあったが,かろうじて雄しべの筒が取れかかった個体も見られる。開花数は年によってかなり異なり,今年は昨年よりは多いようである。鱗片葉の内側に溜まる蜜を求めてスズメバチが来ている。蜜を指につけて舐めてみるととても甘い。ちょうどシイの実がたくさん落ちているので見ればやはり拾いたくなる。遊歩道をぐるりと巡って仁王門から出て,10時35分に出発した。
 室戸岬へ向かう55号線から見える海は凪いでいてほとんど波がない。11時に最御﨑寺の駐車場に到着。山門へ向かう道筋でキバナアマが大分増えている。ここでも山門横のヤッコソウを確認ここではこの1個体のみで,根上がりしているせいか,幹にまで生えているように見える。灯台に出ると眼下に太平洋が広がり,室戸岬の先端部の岩礁が点在する。林の縁にはフウトウカズラが枝から垂れ下がり,色づいた果実がたくさん着いている。石段を下っていくと,モロコシソウの花後のガクが白く脱色して花のように見える株が数株。アリドオシには見事に赤い実がたくさん着いている。さらに下るとキシュウナキリスゲが数株,その向かいではツワブキの花をアサギマダラが吸蜜していた。遍路道の上部はスダジイ林だが,中部付近にはタブが多く,下部の海岸近くはウバメガシの林になる。一夜建立の岩屋付近は林床をクワズイモが多く,岩屋の縁にはキジョランの大株があり,蕾がついていた。12時頃に海岸に降り昼食とする。風もなく穏やかな天候で気持ちが良い。眼前の岩にはアゼトウナとシオギクが群れて咲き,浜にはハマエンドウ,ハマアザミ,ハマナデシコ,ツルソバなどの花が咲いている。ツルソバはもともとは足摺岬周辺のもので室戸にはなかったはずであるが,30年ほど前に夜須町あたりに県内帰化?して以来急速に東へ分布を広げ,今や昔からあったかのように室戸岬にも普通に見られるようになってしまった。しかしそれ以上にウチワサボテンの大株とリュウゼツランの大群落は室戸岬の景観を台無しにしてしまった。遊歩道をホテル明星まで歩く。途中行水の池の傍にオオハマグルマでもない一群の植物があり,徳島県の人たちはキダチハマグルマとネコノシタとの雑種ではないかといっているそうである。確認する必要がある。明星前の湿った場所にはテツホシダの一群があり,国道を挟んだ向かいの湿地では一面に広がっている。湿地の傍らには数本シマエンジュがあり,根元にはキシュウナキリスゲが少数生えている。
 13時10分に室戸岬を出発し,東洋町を目指し,13時50分に野根八幡宮に到着し,徳島県の片山氏と合流。ここの境内はビロードムラサキがとても多く,果実が白く熟し始めている。林はスダジイ主体の林で,イチイガシも数本生えている。スダジイの元にはわずかだがヤッコソウも顔を出している。林床には今が盛りのセンリョウの実が熟しており,石垣の上にキミノセンリョウが1株見えて,皆が撮影。林内ではヤマビワ,ヤブミョウガの実,メダケ,フウトウカズラなどを確認。14時20分に八幡宮を出て,14時30分に白浜で,葉が落ち始めたハマナツメ,砂浜に恐竜の足跡のようなハマニガナなどを見て,帰り際に浜に流れ込む水路にもハマナツメが生えているのを確認,さらに手前の国道縁にハマボウが1本生えているのが見えた。その後海の駅に立ち寄り,今夜の宿海陽町の遊遊NASAには15時30分頃に到着した。
 まだ明るかったので部屋割りの後,三々五々付近を散策。基本的にはウバメガシ主体の林で,タブノキ,タイミンタチバナ,カナメモチなどが混生し,明るいところではウラジロ,コシダのほかミズスギが目立って穂を立ち上げているほか,シハイスミレなども見られた。
 宿の風呂はトロッとした泉質で美肌の湯「なさ地呂温泉」と書いてあった。部屋はオーシャンビューで,那佐湾が眼下に広がる。宴会は18時30分から始まり,途中主にカナダツアー参加者の写真を見ながら和気藹々と21時頃まで続き,その後部屋でも二次会が行われた。
ヤッコソウを観察
ヤッコソウを観察
12月3日(日)
 翌日は晴れ。部屋から朝日が拝め,寒いのでダルマ朝日のはずであったが,水平線上に雲があり,残念ながらダルマにはならなかった。
 8時に宿を出発し,すぐ下の駐車場にバスを止めてもらい,ミズスギを観察。長野県から参加の藤田氏にとっては貴重品。こちらのように数十センチも立ち上がったものは初めて見るということだそうで,震える手で丁寧に採集をしていた。
 当初の予定では,ここから5分ほどのヤッコソウの北限地を見ることにしていたが,すでに昨日歩いて見てきた人もいるということで省略し甲浦に向かった。
 8時40分に甲浦港に到着し,早速観察を開始。最初に唐人ヶ鼻の灯台への道に入ろうとしたが,入口は封鎖され立入禁止であった。強引に潜り抜けて石段を上ると道は荒れてはいたが通れないことはないようで,我々のそばを釣り竿をもった親子が通り抜けていった。岬の北側にあたる登り口付近はスダジイ主体の林で,タブノキほかカクレミノやタイミンタチバナなどが混生し,クロバイやカナメモチも見られる。灯台の広場をさらに東へ細い道があり,岬の先端へ行ける。南側にあたるこちら側は乾燥しておりウバメガシの林である。クスノキやセンダン,ヤマモモ,トベラなどが生える。先端には大きな岩があり,甲浦湾や沖の島々がきれいに見える。元へ戻りながら石段の途中にムヨウラン一種の果実を確認。港からさらに甲浦小学校の裏山への道を上る。ツワブキやヤクシソウの花が咲きハナミョウガの果実が目立つ。道の傍らにシチトウハナワラビが数株、さらにシロダモの果実ツルソバの花やコスミレの花も咲いている。国道に架かる橋を渡るころからぼつぼつと小さなクサマルハチが出始め、小学校裏の避難路を過ぎたころには普通に結構大きなクサマルハチが見られるようになってきた。クサマルハチは故山脇哲臣氏が1943(昭和18)年2月7日に東部で初めて東洋町野根相間で発見し,同年2月22日に甲浦小学校裏で群落を発見,さらに同年3月24日に秋沢明氏と港に面した杉林で大きな群落を発見したものである。今でもこの群落はヤダケが相当生えこんでいるが存続している。地図上ではこの道は電波塔まで行き止まりだが、新たに湾側からの津波避難路ができていて、それを下りて湾側へ降り、港へ引き返した。湾の堤防沿いは日曜日とあって多くの釣り人で賑わっていた。
ハマニガナ
ハマニガナ
 港を11時に出てすぐ白浜の海の駅に到着。宿舎で記念撮影を撮り損ねたので、この浜をバックに記念撮影。丁度大潮の引き潮時であったので、砂州を渡って赤葉島へ向かった。私有地であるため立ち入り禁止の看板があるため、周りから林を観察する。ウバメガシとタブ、トベラ、タイミンタチバナなどの林で、アコウやハマヒサカキとともにモチツツジなども生えている。磯は砂岩が波で削られて、竜串のような岩が見られる。
 12時に白浜に戻り、あらかじめ頼んであったお弁当を受け取り、細川さんが海の駅で仕入れたアオチイキ、ビンタ、ネイリのブロックを刺身にして、それをおかずに昼食。通常の観察会ではありえない昼食であった。
 昼食後バスで移動しトンネルを出てすぐの相間の旧道へ入り観察。旧道の峠の広場は太陽光発電のパネルが並び立ち入れない。旧道を往復して,旧道から松ヶ鼻へ向かう細道へ入る。釣り人がよく行く道らしく,ダンチクが生え込んで歩きづらいのか,道端の草が所々刈り飛ばされている。タマシダやハマアザミなどとともにヤツデやビワなどの花やタイキンギクも少し生えている。数百メートルほど行ったところにウンヌケモドキが一群れにまだ穂が残っており,刈りとばされている株も見られた。余り多いものではないのでその近辺で観察。結局鼻までは行かずに引き返し,山手の御嶋神社近辺の観察。植林下はセンリョウが多く,今が盛りと赤い実を沢山着けている。旧道から新国道へ出る道はビロードムラサキにふさがれて歩けない。山際にはここにもクサマルハチの大株がビロードムラサキの藪の中に生えている。山脇氏が東部で初めて発見した場所であろう。御嶋神社の大きな岩場にはミサオノキが多い。ここのミサオノキは内陸のものとくらべると葉が厚く光沢が強く,小さな果実が着きはじめていた。県内ではそれほど稀ではないが,普通なものでもなく,花は5月末だが,花を見る機会は少なく,まして熟した果実を見た事がない。中沢保氏の四国の樹木には2月に撮影した未熟な果実の写真が収録されているので,熟すのは3月中旬頃か。相間の田は昔ミミカキグサやクロホシクサやクロタマガヤツリなどが群生して実に見事な田であった。今も田は維持されているが,管理方法が変わって,収穫後すぐに耕転され,ほとんど見るべきものがない。畦にはタイワンカモノハシが群生している。14時40分に徳島から参加された方々とお別れし,帰途についた。〔鴻上泰〕
赤葉島へ
赤葉島へ
クサマルハチ
クサマルハチ
センリョウ
センリョウ
キミノセンリョウ
キミノセンリョウ