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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2017年11月11日(土)~12日(日)に第526回月例会・第27回四国植物研究会(会場:いの町土佐和紙工芸村くらうど、観察場所:日高村錦山・高知市高ノ森~円行寺・蓮台)が延44名の参加で行われました。

11月11日(土)
 くらうどには受付開始前の13時頃から各県の参加者が集合をし始めていた。受付開始時には全参加者が集まっていたので、世話人会を手早く済ませ、14時20分頃に開会した。最初にくらうどの総括支配人の西川さんから挨拶があり、総会では高知県を皮切りに各県の活動状況の報告が行われた。この中で、次回開催の徳島県からは10月初旬頃に南方系のシダ中心の観察地を予定している旨の伝達があった。
つづいて15時前から研究発表に入り、以下の発表が行われた。
1.成田 愛治(徳島県植物研究会):徳島県のシダ分布情報
 イシガキウラボシ、アタシカカナワラビ、ホソバアタシカカナワラビ等の紹介。
2.佐賀 康男(徳島県植物研究会):最近確認した徳島県の希少植物
 アギナシの観察結果およびウスキムヨウランかエンシュムヨウランかと思ったランは結局ムヨウランとして同定された件。
3.佐藤 明(香川植物の会):ミクリ3種・生活史の違いで同定できるか?
 まんのう池でミクリ属3種(ナガエミクリ、ヤマトミクリ、ヒメミクリ)の生活史を丹念に観察している事例の中間報告。
4.久米 修(香川植物の会):最近香川県で見つかった植物
 ヤマアワ、オオバウマノスズクサ(従来はホソバとしていた)、ウスイロヤクシソウ、イトクズモ、タウコギ、セトエゴマ、ケホシダ、アイノコホシダ?、ナガバオモダカ、ネコノツメ、ハナガサゼリ、アメリカヤガミスゲ?、ホザキムシャリンドウ、ヤマクルマバナ、イソタマ(ホシアザミ)、フウセントウワタ、アイフウリンホウズキ?、オトギリバニシキソウ?キソガワニワホコリ、ヒメミカンソウ巨大型、正体不明のキク科、正体不明の水草などが紹介された。
5.兵頭 正治(愛媛植物研究会):ツクバナライシダについて
 日本初見のツクバナライシダ(リョウメンシダ×ナンゴクナライシダ)の紹介。
6.福岡 豪 (愛媛植物研究会):愛媛県産ヒルムシロ属の種類と雑種形成パターン
 愛媛県産のヒルムシロ属12種の紹介と雑種の存在等の問題点および雑種形成のパターンの解析を行った。
8.山ノ内崇志(土佐植物研究会):高知県から記載された新雑種ツツミズヒキモについて
 高知大学裏の水路で最初に確認されたツツミズヒキモ(ホソバミズヒキモ×ツツイトモ)について見分けのポイントなど。
7.坂本 彰 (土佐植物研究会):新産外来種の紹介
 シナダレトラノハナヒゲ、センジュグンバイナズナ、シンジュボシマンネングサ、シロガラシなど。
 ほぼ時間通り発表が済んだあと、細川が明日の観察コース(日高村錦山および高知市蓮台・高ノ森・円行寺)についての案内を行って閉会した。
 その後、くらうどの宿泊棟へのチェックイン等が行われたが、愛媛県参加者の宿泊予定の離れの準備ができずに、愛媛県の方々にはご大変ご不便をおかけしてしまった。
 18時30分頃から20時30分まで1Fのホールにて懇親会、2Fの談話室で各県の情報交換が行われた。談話室には、香川の高家氏が作成した、6mの西表島産ホソバリュウビンタイ(三谷進氏採集)の分割標本と同じく香川の菊間氏が作成した巨大ウラジロの分割標本が展示され話題を集めていた。ホソバリュウビンタイの分割標本はまず台紙を敷き詰めて生の植物をその上に広げ、羽片は乾燥するとバラバラにはずれるので、羽片と羽軸との境をテープで止め、植物体を台紙に沿って切り離し、台紙ごと新聞に挟んで重しをかけて乾燥させたものだという。なによりも採集者の三谷氏が折り目をつけずにきれいに丸めて箱に入れて持ち帰ったことに感嘆するとともに、高家氏や菊間氏の熱意には脱帽である。

11月12日(日)
 8時までに朝食を済ませ、8時30分に記念撮影。予定通り8時45分に宿舎を出発。広島から参加の斉藤さんをはじめ当日参加者を含めて33名が23台の車で移動。仁淀川を遡上し名越屋の沈下橋を渡り、エコサイクル高知の下を通って船越から錦山公園に向かった。錦山へは9時に到着、早速観察を始める。もう少し早ければドウダンツツジの紅葉が見られる時期であったが、すでにほとんどの葉が落ちており、わずかにコマユミなどの葉が色づいていたにすぎない。花はリンドウやセンブリ、シロヨメナ、ヒメノダケ、アキノタムラソウなどが咲いており、ウメモドキ、ヤマガシュウ、シロダモなどの実が熟していた。遊歩道を山頂まで往復し、谷の道を周回して駐車場に戻った。登山道にはウシクサが紅葉していたり、シハイスミレが狂い咲きの花を付けていた。植生は蛇紋岩地特有のアカマツの疎林で、ドウダンツツジとトサミズキに混生して、ニシキコバノミツバツツジやコツクバネウツギが多い。道沿いにはシンジュギクやヤチマタイカリソウなどの葉が確認でき、バイカオウレンの葉も少し見られた。山頂から妹背峠に出て県道沿いに歩いた組は道沿いでウンヌケモドキを確認していた。
 10時過ぎに錦山公園を出発。国道33号線に出ていの町波川からバイパスを経由、八代から宗安寺への旧道に入り、鏡川に架かる宗安寺橋を渡り、福井分岐から西塚ノ原を経て高知北環状線に出てすぐに高ノ森への車道を上る。道が複雑で少し行き過ぎた車も居たが、全員無事目的地、高ノ森山頂分岐下の車道ぶちに縦列駐車した。そこから車道を歩き、10分ほどで、奥福井からの旧道ぶち斜面に懸崖で咲くタイキンギクの自生地を観察した。丁度花が真っ盛りの時期で、特に県外の方々には喜んでいただけたのではないかと思う。高知県内ではまれではないが、東部を除いてこれほど群生するところは余り見られない。根元を見ると木質化しており、大きな株であることがわかる。菊間さんにこれをまるごと標本にできないだろうかと問いかけたが、ウーンといったきりであった。シダ組の人は目ざとくギフベニシダを2株みつけていた。20分ほど観察した後、車に戻り、峠を越えて円行寺側に下り、ちょうど12時に円行寺鉱山の中に駐車して昼食。
 12時30分ころから観察を開始。鉱山内の道を歩きながら斜面の植物を観察していく。目的のムラサキセンブリは咲き始めで、めいめいそれぞれにレンズを向けている。ヤナギノギク、ヤマラッキョウ、コゴメスゲ、ヤクシソウ、ツリガネニンジンなどが良く咲き、フユイチゴにもたくさんの実がなっている。棚田の畔にはヒメノダケやトサトウヒレン、シラヤマギク、ヤマラッキョウ、ワレモコウなどがたくさん咲いている。刈り取られた稲が干され、美しい田園風景だ。鉱山が開発される前の円行寺はこのような景観だったっことが想像される。トサオトギリもたくさんあったことであろうが、今は全く見られない。現在鉱山の採掘はされておらず、山と畑に戻すための管理が行われており、鉱山内の立ち入りは禁止されている。しかし、珍しい花がたくさん見られるので立ち入る人が絶えず、今回も特別に許可を受けての観察であった。特に車を車道脇に停めての立ち入りは厳重に注意されるので気を付けてもらいたい。棚田を下り、車道を蓮台の集落方面に歩き湿地に咲くタムラソウやリンドウ、ヤマラッキョウ、カザグルマの果実などを観察してもとに戻った。途中ウスイロヤクシソウも1株確認。少し予定時間を過ぎて14時20分頃に解散した。
 宿泊をめぐるトラブルや観察地の事前交渉などいろいろあったが、身近なところでこれだけの花が見られる高知県の良さを再認識していただけたのではないかと思う。会の運営にご協力いただいた皆様に感謝いたします。〔鴻上泰〕
研究発表会では各県の代表者による研究発表が行われました。
研究発表会では各県の代表者による研究発表が行われました。
ホソバリュウビンタイの分割標本
ホソバリュウビンタイの分割標本
錦山の観察
錦山の観察
リンドウ
リンドウ
タイキンギクを観察
タイキンギクを観察
タイキンギク
タイキンギク
円行寺の観察
円行寺の観察
ムラサキセンブリ
ムラサキセンブリ