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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2016年10月9日(日)に第513回月例会(津野町葉山村久保川~貝ノ川林道)が行われました。

 集合場所はかわうその里。乗り合わせて9時に出発した。当日は好天に恵まれたことから,久保川の集落から林道に向かった。林道はあまり使用されていないためか,落石が多く所々崩落しており荒れていた。林道が南北に走るところで,秩父帯(虚空蔵層群)と四万十帯(新荘川層群)の間の仏道構造線(破砕帯)が観察できるところがあり,旧葉山村教育委員会が設置した看板もあった。道路際に石灰岩の露頭が出現しはじめることからその周辺から植物の観察を始めた。切り土の岩壁や道路脇にはイヌトウキが満開で,スズメバチも多く飛びかっていた。先へ進むとあたご洞という石灰岩の洞穴があり,そこまでの道も整備されていた。奥は浅いが開口部は広く,開口部周辺にはクモノスシダが着生していた。ノガリヤスやアブラススキの穂がよく目立ち,アシボソ,コゴメスゲ,アキカラマツ,ヒキオコシ,シロヨメナなどの花が盛り。石灰岩地によく見られるフユザンショウやヤマコウバシは果実が熟しはじめでムクロジにもたくさんの果実が熟していた。サンショウの棘のない型であるアサクラザンショウの果実もきれいに熟している。海岸沿いに生えるトベラやクスドイゲ,ハマクサギ,キジョランなども生え,野生と思われるビワもよく目立つ。
 次に移動して停めた場所からは,ちょうど遠く久保川の集落が見え,地域の運動会の音も聞こえてきて,美しい棚田も見ることができた。金属網のかかる高い崖の周辺でヨシススキと思われるイネ科の植物を採集した。皆で周辺を探すと崖の上の方にも多数確認できた。葉はススキに非常によく似ていたが穂が異なっていた。崖地の上に群生していたことから,吹きつけされたものと考えられたが,種を同定して由来を確認する必要がある。この林道は斜面方位や周辺の植生の変化によって,様々な環境があって種類数も豊富であったため,観察に夢中になり昼食を取り始めたのは12時半を過ぎていた。
アサクラザンショウ
アサクラザンショウ
 昼食を取った場所では,道際にイズハハコやヤブタバコ,コヤブタバコの花やアメリカネナシカズラなども確認できた。今回の観察会は,少しずつ林道を車で移動し狭い林道の脇に車を寄せて停めていくことにしていたため,通行する車の支障となるおそれがあったが,この林道での観察中に他の車に一台もあうことはなかった。
 昼食後,風車の里公園へ向かう途中で一度止まり,石灰岩地の植物を観察した。ここは昨年の例会で観察したところだが,今回その時には見つからなかったシダが確認され,同じところでも時期や目を変えると新たな発見があることを実感した。
 その後,風の里公園でトイレ休憩。天気が良かったので,眼前に採掘されている鳥形山の姿や,遠く石鎚山系の山々が望めた。周辺の林ではキッコウハグマやシコクママコナの花が咲き始めで,林内でタマゴタケやサンコタケが見つかった。特にタマゴ型のツボから出たばかりの可愛いタマゴタケの姿には,皆さん魅了されて盛んにシャッターを切っていた。
 最後に風の里公園の先の落葉樹林内でクサヤツデの群落を観察したが,気候の影響かきれいに花を着けた個体は少なかった。その後,かわうその里に戻って集合してから解散し,帰路についた。〔前田綾子・鴻上泰〕
断層を観察
断層を観察
イヌトウキ
イヌトウキ
アオベンケイ
アオベンケイ
貝ノ川の棚田
貝ノ川の棚田
ヨシススキ?
ヨシススキ?
キッコウハグマを観察
キッコウハグマを観察
イズハハコ
イズハハコ
クサヤツデ群落
クサヤツデ群落
皆を夢中にさせたタマゴタケ
皆を夢中にさせたタマゴタケ