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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

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2016年7月10日(日)に第510回月例会(四万十町窪川興津三崎山)が行われました。

 梅雨末期の不安定な天気のもと19名の者が「あぐり窪川」の駐車場に集まった。担当より簡単な説明の後,8台の車に分乗して,9時過ぎに興津に向け出発した。出発して間も無く深い霧に包まれた。これでは頭上の樹木観察などできるだろうか?と不安になったが, 興津トンネルを抜けて進んでいくうちに霧は次第になくなりほっとした。興津では地元の伴内珠喜さんが待って下さっていて, 池田十三生さんと合わせてお世話になることになった。
 8台の車は, 興津の港の縁を通り, 三崎山山頂へと続く登山道路に入って行った。曇り空であったが次第に日も差してきて天気は回復に向かい, 雨の心配がなくなり本当に良かった。道路は狭く, やがて舗装道路から未舗装の道となった。けれども, 両側にはたくさんの植物が青々を茂り, 観察意欲をそそられた。この道路沿いは豊かな自然林で, 湿気も十分あり, 植物の育つ環境としては非常にいい環境であると思った。
 未舗装道路になったあたりから, 運転手以外の者は車から降りて歩いて観察を開始した。道が狭く駐車できるところがないので運転手は先に進んだ。運転手さんご苦労さんでした。
 やがて,本日の大きな目的であるヘツカニガキが生育しているところまで進んだ。ヘツカニガキは道路のすぐ下に何本か見えた。丁度,花期でたくさんの花を見ることができた。枝先に球形の頭状花序を総状に3~10個ほどつけていて, まるで小さいイガグリのように見えた。花序は1cmほどの大きさで放射状に長く突き出た花柱が目立ち, 面白い形の花であると思った。念願の花が初対面でこんないい条件で見られて嬉しかった。
 さらに進んでいくと満開のニガクサの群落があったり, 見事に咲いたナギランの花やモロコシソウの花も観察でき, 皆が大喜びで写真に収めた。多くのシダ植物もあったし, カクレミノの花や黒い果実をつけたハマクサギや赤い果実のカゴノキも見かけた。カギカズラやキジョランなども多いところだった。
興津崎灯台のもとで昼食をとった。この灯台は, 日本有数の重要な灯台で, 非常にりっぱであった。灯台前は広い空地となっていた。また灯台の設置地点は国土地理院の基本電子基準点になっていてきわめて大切な場所だと知った。
 昼食後は灯台からさらに上の観音堂へ行った。ここにもヘツカニガキの木があり, そして境内の周囲の林にはトキワカモメヅルがきれいに咲いていた。また境内にはクチナシの巨木があった。クチナシでこれほどもの巨木になるものは滅多にない。驚くべきクチナシであった。観音堂周辺の観察を終えたところで, 下山となった。下山は全員車に乗った。
 下山後は,興津集落の西南の林縁やそこの墓地周辺の植物を観察した。ホルトノキの巨木がたくさんの花を咲かせていたし, 墓地にウマノスズクサが独特の形の花をたくさんつけていて面白かった。
さらに帰路は興津トンネルの上の峠越えの道で仁井田の方に帰った。この峠の道沿いも好観察地でホウライカズラの花やヤブレガサの花, アマヅルなどを観察できた。また, 日陰にはダイコンソウの花のみごとな群落もあったし, シダ植物も豊富であった。さらに, 今を盛りの濃い赤の美しいネムノキの花やエゴノキにできるエゴノネコアシアブラムシの虫えいやたくさんのムベの果実なども見ることができた。
 今回の月例会では、全般的に多くの植物種を観察できたし, 梅雨時ならではの珍しい花もたくさん観察できた。そして三崎山の自然の奥深さ貴重さをあらためて感じた観察会となった。青少年旅行村の興津の海山の魅力は高知の宝だと思った。下見の時から案内して下さった池田さん, 伴内さんたいへんお世話になりました。本当にありがとうございました。 (宇田英一)
ヘツカニガキを観察
ヘツカニガキを観察
ヘツカニガキ(7月3日)
ヘツカニガキ(7月3日)
ナギラン
ナギラン
モロコシソウ
モロコシソウ
灯台を出発
灯台を出発
トキワカモメヅル
トキワカモメヅル
トキワカモメヅルの観察
トキワカモメヅルの観察
満開のホルトノキ
満開のホルトノキ