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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2015年6月14日に第497回月例会(大豊町尾生~塩降の滝)が行われました。

 8時30分県立美術館下のグランド駐車場に集合.尾生からの林道がかなり荒れているので,車高の高い車4台に分乗して出発.高速は乗らず,国道32号線を大豊町穴内の吉野川橋まで走り,川口方面へ左折.尾生橋の手前から尾生山林道へ入る.入り口には立派な「ホタルの里」という標柱と「塩降りの滝約4km」の真新しい標柱が立っている.林道入り口付近の左岸側に岩壁があり,それに連なる川岸にもコゴメカラマツが生えているが,近づくには谷を降りなければならないので,対岸から観察する.影地で暗い中に,葉の鮮やかな緑色が確認できるが,かなり見づらい.コゴメカラマツ(Thalictrum microspermum Ohwi)は宮崎県尾鈴山をタイプ地とし,その周辺にはややまれに見られるようだが,それ以外では高知県と徳島県にまれに見られる多年草で,県内ではこの尾生周辺の谷でしか見られない.花は4月末から5月中旬と思われるが,まだ写真は撮れていない.
 林道はしばらく舗装で,1.5kmほどから荒れてくる.2kmほど走り,果樹園を過ぎると未舗装の荒れた道となり,路肩に分散して車を置いて歩くことにする.この道は数年前には大荒れで車は通れない状態であったが,石を入れてならしてあり,なんとか滝の入り口までは車で行ける状態ではあったが,林道ぞいにも観察したい場所があったため歩くことにした.10時頃には朝方降っていた小雨も止み,薄日もさすくらいの天候に回復した.植林地と広葉樹林とがモザイクになったような林道沿いはかなり湿った状態で,シダ植物の種類が多い.花の咲いている植物は季節がら少ないが,コガクウツギやネジキ,ムラサキシキブ,ヤブイバラそれにウメモドキなどに花が咲いていた.谷沿いはフサザクラが特に多く,果実がついている.アカシデ,クマシデ,イヌシデなどのシデ類やケヤキ,ケヤマハンノキなどがよく目につき,岩石地にはツガが多い.バイカアマチャは蕾で,谷筋にウラジロウツギも多い.花の終わった大きなマムシグサ,リョウメンシダは薄暗い湿った場所に多い.果実をつけたシロバナショウジョウバカマも多い.
 11時30分頃に滝の入り口に到着.対岸の崖には満開と思われる赤いヤマツツジの花が見える.その隣の白い花はテイカカズラか.その周りはケイビランがびっしり生えている.滝の入り口にイイギリの雄花がたくさん落ちていた.滝への細道沿いには,コミヤマスミレやシコクチャルメルソウの葉も見える.谷付近の岩の上下にナルコユリの花が咲き終わり.谷の岩でコゴメカラマツがまじかに見られたが,すでに果実になっていた.小道には手すりや鉄の橋が架けられ歩きやすい.
 12時頃滝に到着.水量が多く右側の滝は轟々と音を立てて流,正面の滝は数十mの上から流れ落ちる.その間には数本のしぶきのような滝が落ちて,塩降りの名はここからかなと思わせる.滝を眺めながら昼食にする.滝の崖にもコゴメカラマツがたくさんついているが,葉が紫色を帯びている.滴の中の果実はつぼみを思わせる.崖にはスダレギボウシも多く,ヤマアジサイの花も見える.滝の上に行ける様に山手にロープが張ってある.滝の上部にはツガやヒノキとともにヤマグルマやシャクナゲが生えている.
 12時50分頃滝を後にする.滝からの帰り道にハグロソウと思われる一群を見つけた.午前中には見えなかったギンレイカの花が点々と咲いている.花の終わったところのアオテンナンショウも見られた.林道沿いは結構木の種類もシダの種類も多く,なかなか楽しい道であった.
 2時半ころに車に戻り,尾生橋で解散した.帰りには雨が降り出し,束の間の雨の止み間の観察会であった.〔文・写真:鴻上〕
塩降の滝
塩降の滝
コゴメカラマツ
コゴメカラマツ
水玉に閉じ込められたコゴメカラマツの花
水玉に閉じ込められたコゴメカラマツの花