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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

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2014年7月13日(日)に第486回月例会(本山町坂瀬林道・桑ノ川林道)が行われました。

 第1集合場所のJR大杉駅ではJRを利用した参加者はおらず,自家用車での参加者を乗り合わせて第2集合場所に移動.9時に第2集合場所本山町吉野クライミングセンターに集まったのはいつもよりやや少なめの17名であった.
 数日前に台風8号の大雨があり道路の状況が心配された.県道高知伊予三島線に入るときちんと整備してあり,「さすがは県道」と思ったが,それも冬の瀬まで.冬の瀬から以北はこれが県道かと思われるような荒れ具合であった.冬の瀬まで整備してあったのは月末に開催される汗見川マラソンを控えてのことと思われた.坂瀬林道の入り口手前で通行止め個所があり,予定より少し遅れ10時10分に調査を開始した.
 林道入口の川側の崖にはギボウシがたくさん生育していた.花茎もまだ伸びておらず同定するための材料が少ない中で,スダレギボウシではないかという事になったが,帰ってよく調べるとカンザシギボウシのように思える.葉だけでも採集しておけばよかったと思ったが,後の祭りである.
 梅雨末期のこの時期,植物も繁殖の適期ではなく花をつけている種は少ない.そんな中でアカショウマの花はひときわ目立つ.これも確実な同定をするためには地下部を確認する必要がある.標本用を兼ねて1株掘り上げて確認すると「大きな根茎がある,走出枝はない」という事からアカショウマと同定できた.ところが,最近牧野植物園で頂いたチェックリストを見るとアカショウマがない.そんなはずはないどうして・・と記憶をたどると,数年前に「四国のアカショウマはアカショウマでなくシコクなんとかになった」との情報があったことを思い出した.シコクのページを探すとシコクショウマがあり,納得した.
 梅雨時の主役ヤマアジサイは清楚で美しい.その他,ウツボグサ,モミジカラスウリなどを楽しみながら少し登ると,ナガバヤブマオの大きな群落があった.大型の草本類はシカの影響を受けやすいが,その中で繁茂しているという事はシカの嫌いな性質を有しているのであろうか.
 さらに進むと,道端の斜面に開花直前のモウセンゴケがあり先行者が写真に収めている.林道がスギの人工林の下端を横切るところで参加者の一人がイガホオズキを見つけた.これもシカの食害にあっていて,地上部は通常の半分もない.チェックリストで確認すると本山町では未採集であった.標本として採集したかったが周辺を探しても1個体しか見つけることができない.標本採集をあきらめ,写真での記録にとどめた.
 昼食後午後の行動を検討したが,坂瀬林道をこのまま進んでも新たな種は少ないだろうとの判断で,元に戻って桑の川林道に移動することにした.午後1時40分に坂瀬林道の入口に到着し坂瀬林道での調査を終えた.
 車で桑の川林道に移動し2時40分から4時30分まで桑の川林道で調査を行った.桑の川もシカの被害が顕著で,路傍はササガヤ,ノコンギクといったシカがやや嫌っている植物,サワハコベのように茎が地上を匍匐し,シカにとっては食べにくい植物が目立った.16時30分桑の川の調査を終了,朝集合した吉野クライミングセンターまで戻り解散した.
 今回調査した範囲は高知県植物誌調査の際,地元の調査員さんと牧野植物園の田辺さんが丁寧に調査しており,未採集の種はほとんどなかった.来年度以降の話になるが,例えば市町村別の標本の少ない所を優先して定例会の会場にするなど,既存のデータの量の多少も例会場所を選定する際に考慮したらよいと思った.(文:坂本 写真:細川)
モウセンゴケ
モウセンゴケ
ウラジロイチゴ(エビガライチゴ)
ウラジロイチゴ(エビガライチゴ)
オオカモメヅル
オオカモメヅル
オオバウマノスズクサとジャコウアゲハの幼虫
オオバウマノスズクサとジャコウアゲハの幼虫
コミヤマスミレ(果実)
コミヤマスミレ(果実)
ムラサキシキブ
ムラサキシキブ