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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2011年3月13日(日)第446回月例会(香南市夜須町羽尾)が開催されました.

 寒波は治まったものの,3月11日に発生した東日本大震災(マグニチュード9.0世界歴代第4位の巨大地震)の凄まじい被害への興奮が覚めやらぬ気持ちの中,8時30分,集合場所の土佐くろしお鉄道ごめん奈半利線「香我美駅」に22名の参加者が集まった. 今回予定の行き先は,本来,「目高森」や「三辻山」の方面であったが,下見の結果,今の時期あまりにも見るべきものが無さすぎるということで,急遽,観察場所を夜須町羽尾の「大釜の滝」や「長谷寺(ちょうこくじ)」を中心とする歴史の道を辿るコースに変更して実施した.
 8時40分,8台の車に分乗し,香我美駅の駐車場を出発し,国道55線の夜須町のヤシパーク前の信号を左折し,夜須町北部の集落「国光」を経て,羽尾を目指した.国光から奥の山道は曲がりくねった狭い道で,途中運悪く,市の過疎バスにばったりと出会い,すれ違う広い所がなかったので ,バスに延々とバックしていただいてやっと通行できたという目にあった.親切なバスの運転手さん「本当にありがとう」今も感謝しています.
 そんなこともあったが,「大釜荘」には9時50分頃着いた.そこは元「羽尾小学校」の跡地で,そこの広い駐車場に車を置かせていただき,早速「大釜の滝」方面を目指して道路を歩いた.道路沿いの植物も観察しながらやがて名瀑「大釜の滝」に着いた. 
高知県香南市羽尾 大釜荘
高知県香南市羽尾 大釜荘
 滝は三段になって流れ落ち,名爆に恥じないなかなかの眺めであった.滝壺は本当に大きかった.滝の魅力もさることながら,滝周辺にはヤノネシダ,ヌカイタチシダ,キヨスミヒメワラビ,クルマシダ,イヌチャセンシダ等のシダ類が豊富で,サイハイランやナンカイアオイなどもあり,非常に魅力的な場所であった.そこへ,地元「羽尾」在住の山岡さんという男性が現れ,「一緒に歩いて植物の勉強をさせていただきたい」という申し出を受け,願ってもない嬉しい同行となった.歩きながら山岡さんには,羽尾の今昔についてたくさんのことを教えていただいた.昔はマツタケがたくさん採れた(少ないが今も採れる)というお話も聞いた.道は滝からしばらくは上り坂であった.ソヨゴやツクバネガシ,ウンゼンツツジ,ヒサカキ,タカノツメなどの樹木があり,やがて満開の花を咲かせた立派なアセビにも出会った.山中には電力会社の送電線の鉄塔が立っていて,その61番と62番の鉄塔の中間のたいへん見晴らしのよい場所で昼食をとった.昼食後の下山道で,日当たりのよいところに何種類かのスミレの花も点々と咲いていて嬉しい春を感じた.ずっと下の日陰の林道沿いには目立たないけれどヤマネコノメソウも小さな花をつけていた.やがて道は車道に出たが,すぐに長谷寺というお寺を目指す登山道に入り,またしばらく登っていった.そして1時30分頃,長谷寺の境内下の展望所に着いた.ここからの眺めはまさに絶景で,土佐湾や香南市・南国市等が雄大に見渡せた.(写真上)
 しばらく展望を楽しんでから,長谷寺の境内に入って観察した.この寺は行基が創建し1300年余りの歴史をもつという名刹で門前はかつての往還道の交差点で大いに賑わったそうである.本堂の横には池があり,その周りの木々にたくさんのムギラン,セッコク,カヤランなどが付着しているのが見えた.またイスノキの大木が4本ありみごとであった.また境内に積み上げられている古瓦に生えたヒメノキシノブやミヤマノキシノブを見ることもできた.この寺は随分標高の高いところにありながら,ゆったりと広い境内を有し,また庭もよく手入れが行き届き,ご住職の素晴らしい人柄がしのばれた.
 寺からは往路とは別の山道を下り,仁井田神社にも立ち寄りながら,大釜荘に戻りゆっくりと休んだ.全行程6時間あまりの歩き通しで大いに運動になった観察会となったため,大釜荘でのコーヒーやケーキがことのほかおいしかった.  
 そして,午後3時半頃解散し帰路についた.好天に恵まれ,スミレ類を中心に早春の花を愛でることもできた暖かい一日であった.香南市の隠れた桃源郷「羽尾」の魅力を満喫していただけたかなと,香南市在住の担当者としては自己満足した一日となった.( 宇田英一)
高知県香南市羽尾 大釜の滝
高知県香南市羽尾 大釜の滝
高知県香南市羽尾 長谷寺
高知県香南市羽尾 長谷寺
コスミレ(白花)
コスミレ(白花)
コスミレ(青花)
コスミレ(青花)