menu

The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2023年9月24日(日)に第596回月例会(高知市土佐山高川・土佐町石原,工石山・赤良木峠)が16名の参加で行われました。

 午前9時に土佐山夢産地パーク駐車場に16名が集合,本日の調査の説明をして3班に分かれて出発。それぞれの班ごとにフロラ調査を行った。

【1班】(土佐町石原林道,7名)

アキチョウジ(撮影:坂本彰)
アキチョウジ(撮影:坂本彰)
 9:40,林道班7名は石原林道入り口に到着。観察を開始した。
 木々に囲まれた林道は木陰が多く、涼しくて快適であった。工石山は野鳥の観察会も行われる観察スポットとの話を聞いたが、さえずりも多く聞こえ、時々、ゲラ類の鳴き声も届く。6月の月例会の時には小さかった草本も大きく育ち、花や実をつけている。歩き始めてすぐに満開のアケボノソウやハガクレツリフネが出迎えてくれた。イタドリやオオイタドリは花のピークを過ぎ、ほとんどが白っぽい果実の状態で美しい。オトコエシも果実の状態だった。林床のオオマルバテンニンソウも咲き始めている。同じく咲き始めの林道脇のアキチョウジは、葉の傷みもほとんどなく、満開になればトップアイドル級の被写体になるのではないだろうか。
 入り口から少し進むと、ウスゲタマブキやミヤマコウモリソウも観察できた。前回は根生葉だけの姿だったオオダイトウヒレンと思われるトウヒレンの仲間も開花を始めており、同定用の標本を採集した。
 12:00に昼食。場所も前回とほぼ同じ場所だった。昼食後も林道を進みながら、観察を継続。シカの食害も散見され、シダ類の量が少ない。林道沿いの草本類は、比較的被害が少ないようだった。ただ、前回はちょっとした群落を作っていたセイヨウオトギリの姿がほとんどなかったことは意外だった。
 再集合の時間が近づいたことから、14:00に引き返し、14:30過ぎに林道入り口に到着、最初の集合場所まで移動し、各班の成果報告を行った。
 林道班はゆっくりと散策し、多くの花を観察できた楽しい月例会で会った。〔福原宏〕

【2班】(高知市高川工石山妙体岩登山口~サイの河原,4名)

ヨコグラヒメワラビ(撮影:鴻上泰)
ヨコグラヒメワラビ(撮影:鴻上泰)
 4名で工石山を担当。当初は北回りコースの予定であったが,登山口に駐車スペースがなく,人が多く入っている様子なので,妙体岩コースに変更。妙体岩登山口には人影はなく静かに調査できそうであった。ただ,私の体調が悪く,出発が約1時間近く遅くなってしまったので,登山口から横道をサイの河原往復での観察となった。登山口付近の斜面にはヒメキンミズヒキが黄色い絨毯のようにたくさん咲いていた。
 横道に入ると珪岩の大岩にヌリトラノオやオオフジシダ,フジシダが目立ち,ケイビランも見られる。アカガシやモミの高木にタンナサワフタギやイヌガシが生え,ハイノキには実が着いており,林床にはハリガネワラビなども多い。ギンリョウソウモドキは花が終わりかけ,歩道沿いのオオマルバノテンニンソウは咲きはじめ。
クサノオウバノギク(撮影:鴻上泰)
クサノオウバノギク(撮影:鴻上泰)
 途中の岩場にクサノオウバノギクの小群落があるが,なんとか花がちょこっと咲いている程度であった。
 沢の音が大きくなってくるあたりにヨコグラヒメワラビが点々と生え,ギョウジャアザミがちょうど花であった。ヒメコウモリソウがあった斜面は土砂が流れたのか,個体数は激減しており,花もやっと咲いている株が数株見られた程度であった。
ヒメコウモリソウ(撮影:鴻上泰)
ヒメコウモリソウ(撮影:鴻上泰)
 賽の河原近くになるとオオマルバノテンニンソウが群落で咲き始めており,ヨコグラヒメワラビの個体数もかなり多く見られた。サイの河原の東屋で遅い昼食をとり引き返した。〔鴻上泰〕

【3班】(高知市高川工石山登山口~赤良木峠,5名)

タカネハンショウヅル(撮影:佐藤功)
タカネハンショウヅル(撮影:佐藤功)
 9時50分、林道の工石山登山口を出発。林道から工石山登山道が山道に入る間は、工石山北回り班の調査と重なることから、その部分は避けて、鎖のゲートから先を三辻山班の調査範囲とした。
 調査地は時おり車の通る作業道で、工石山・三辻山の山域では攪乱された地域と言える。とはいえ、本来の植生も残っており、植物相調査で確認された種は、五目ずしのような結果となった。
 スタート地点付近ではトサノミカエリソウ(オオマルバノテンニンソウ)、ハガクレツリフネ、ヤマキツネノボタン、イヌトウバナのほか、ヤマクルマバナ、オオバシャシャブシ、さらには路傍雑草のカゼクサなど幅広く確認された。
 中ほどでは、ウラジロウツギに絡まってタカネハンショウヅルがたくさんの花をつけ、撮影を促していた。周辺では、ヒナノウスツボ、マルバノホロシ、コメナモミも確認された。
マルバノホロシ(撮影:佐藤功)
マルバノホロシ(撮影:佐藤功)
 三辻山登山口分岐まで来ると、自然度が高くなりクルマムグラ、ミヤマタニタデ、アオテンナンショウがあり、作業道の両側にはアキチョウジが花壇のように長い列をなしていた。残念なことに、開花の始まりで開花株は少なかった。「花の盛りには見事だろうね」と言いながら先を急いだ。
 赤良木峠では時間が押してきて急ぎ足となり、立派な実を付けたウリハダカエデを採集したほかは、路傍の水たまり周辺でクサイ、イグサ、テンツキ、ヒメヒラテンツキを、草地でクルマバナ、アキノタムラソウなどを確認したのみで引き返した。

 復路は急いで帰ったため、帰りに採集しようとした数点を採り忘れ、予定の14時30分に登山口に到着した。

 三辻山班は5名であったが、それぞれ得意分野が異なり、「5人寄れば文殊の知恵」でお互いに情報を提供しあい、時間はかかったが多くの種を確認できたと考える。ただ、メンバーの中にシダ類を正確に同定できるものがいなかったので、シダ類は調査の対象としなかった。〔坂本彰〕